思い出

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深い深い森の中 古びた小屋と佇む影 手に持つ箱には拙くて懐かしい文字 涙が溢れて箱を濡らした 蘇る記憶 その中で笑うのは一人の少女 ずっと大好きで ずっと大嫌いだった少女の笑顔 あの時ただ一言言えばよかった 結果は変わらなくても この胸の後悔は取れた筈だから いくら考えても 失った時間は戻らず ただ淡々と酷く空虚な時間が廻る 扉を開けて小屋へと入る 其処に残るものに形は無く 温かい思い出が部屋を満たしていた 窓を開けて空気を通す 机と椅子の埃を払い 椅子に座って目を閉じる 溢れる思い出 何処からか楽しそうに笑う少女の声が聞こえた気がした
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