第一章

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よく見れば、喧嘩では無かった。 小柄な少年が男共に囲まれて、肩を震わせ泣いていたからだ。 一人の男の手には財布。 怖くて抵抗すら出来ない様な弱い奴から金を巻き上げるとは随分と卑怯で情けない奴等だな。 「なあ、そろそろ解放してやったらどうだ? お前等格好悪いぜ?」 呆れた様に言ってやれば、男共……4人くらいが一斉に俺を睨んできて。 「何だと?!」 「お前、見ねぇ顔だな。誰だ?」 そして一人の男が突然俺の胸倉を掴んだ。 「あ? 人に聞く前にお前が名乗れよ」 しまった。 思わず喧嘩腰になってしまった。 これでは「喧嘩をしよう」と煽っている様なものでは無いか。 どうにか逃げ出さなくては。 俺は此処では平和に過ごすと決めたのだから。 「あーー……いやー、何でも無い! 今のは忘れて。取り敢えずみっともない事は止めてそのヒト離してやってよ」 俺なりに考慮したつもりだった。 それでも男共は馬鹿にされたとでも思ったのだろう、眉尻を上げた。 そして、掴まれていた胸倉に更に力が入った。苦しい。 .
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