第一章

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壁に何かがぶつかる鈍い音。 時折、嫌でも耳に留まる男の低い呻き声。 嗚呼、ついに来てしまった。 先程から聞きたくも無い音が次々に耳へと入り込んでくる。 聞こえてくるのは、紛れも無く喧嘩、殴り合いをしている男子生徒共の声、生々しい効果音。 それは視覚的にも俺を刺激していて。 目の前には制服のシャツが荒々しく破かれ、紅く血が滲んでしまっている者がちらほら見られる。 全く無傷な、強いのであろう奴もいて、何だか少し可哀想に思えてきた。 今までの俺であれば、喧嘩現場を目撃したら確実に中に入って行って一人勝ち、と言う成績を収めていた。 それ程に喧嘩好きで、学校を退学させられたのだ。 そう、俺がこの学校に来たのは親の転勤でも、虐めにあっていた訳でも無く、喧嘩のし過ぎで警察沙汰になりかけて前の学校を退学になってしまったから。 .
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