◎辻村の決意

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「教師になるのは、俺の昔からの夢だった。 俺はずっと化学が大好きで、生徒たちに化学の魅力を伝えたい、好きになって欲しい、そう思ってたんだ。 化学って結構嫌いな奴多いからな。 だけど教師っていう仕事はただ教科が好きで教えてるだけでいいっていう職業じゃない。 教師という人間がいて、生徒という人間がいる。 結局は対人間の仕事なんだよな。 人間同士のつきあいっていうのは予想外の事ばかりだったし、思い通りになんていかない。 それに教師は実直さや誠実さ、真面目な人間性が重視される。 俺は自分の本当の性格を隠して、仮面をかぶった」 辻村の告白にみんな驚いたのか、辺りが戸惑ったようにザワザワした。 「誰もがみんな本音を隠したり、裏表があったり、接する人によって態度を変えたりって多少はあると思う。 そうじゃないと人つきあいなんてやっていけないもんだしな。 だけど俺は元来真面目でもないし、がさつだし、酒も好きだし、タバコだって吸う。そんな本来の俺とは180度違う仮面をかぶっているうちに息苦しくなってしまったんだ。 学校の外でも、休みの日でも、教師という重圧があってどっか気が抜けなかった。人と接する時だってそうだった。 こんな自分を見せたらまずいとか、嫌われるってどっかおびえてたんだと思う。」 ・・・驚いた。 いつも辻村は自信満々なんだと思っていた。 なんの苦痛もなく、器用に表の顔とウラノカオを使い分けてるんだと思っていた。 だけど違っていたんだ――― 辻村は表の顔に息苦しさを感じていたんだ。
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