◎勇気

4/22
前へ
/751ページ
次へ
辻村が両手に紙袋を抱えて、校庭に出てくるのが見えた。 ゆっくりと校庭をつっきるように、辻村は正門に向かって歩いていく。 校庭には誰もいない。 見えるのは辻村の背中だけだ。 2階から見る辻村の背中――― すごくすごく大きく見えたはずの背中が、今は何だか小さく見えるよ。 それは2階から見たからだけのせいじゃない。 絶対に。 辻村の背中がどんどん遠くなっていく。 辻村は去ってしまう。 もう会えない――― たぶん、そう。 辻村はたぶん一人でどこかに去ってしまう。 私に行き先も告げずに、連絡も取れないようになって、どこかに行ってしまうだろう。 そんな気がするんだ―――
/751ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2410人が本棚に入れています
本棚に追加