世界中を敵に回しても。

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  その国は隣国からの侵略を受け危機に晒されていた、戦力比約十倍、地の利を生かし何とか数ヶ月は持ちこたえたが何もかもが限界に達している、遂には首都への敵の部隊侵入を許してしまい、今まさに市街地戦が繰り広げられて居た。   あぁなんと言う事だろうか街が焼け人々が逃げ惑って居るではないか、街を見下ろすベッドルームで姫は自らの無力を嘆き地面に座り込んで居た、黒い空を照らす地上の炎が囁かな煌めきを消し去り、その炎が敵の姿が禍々しく浮き立たせて居る。   赤い鎧に怪しく光る瞳、手に構えた武器からは光りが放たれ街を焼いて行く。   「まるで悪魔よ……」   姫の口から言葉がこぼれた、近衛兵達も善戦しては居るが、民を守りながらではまともな戦いにはならず次々と敗れて行った、姫は自分の無力さを呪い、自分の無知を呪った、民を救えぬ自分に生きる価値など無い、そして姫は立ち上がるとテラスまで出た、頬に一筋の輝きが流れたその時だった。   「姫! ご無事ですか!?」   その声は最も若い騎士の声だった、彼は姫が辺境で事故に巻き込まれた際に姫を救った少年だった、彼を姫を救った礼に兵士に召し上げると、あっという間に騎士へと昇進した男でもあった、その彼が今姫の目の前に居る、街すら守らず何をして居るのか、姫はすぐさま街へ戻り敵を倒すようにと命令を下そうとした。   「姫、お乗り下さい! ここに居ては危険です!」   彼は王族を逃がす為にここに居るのだ、そう姫は思い憤怒した、民すら救えぬ王族を守ってどうすると。   「私に構うな! 街へと下り敵を討て!!」   王族の命令は絶対だ、それは王族が自らを殺せと命じれば王族を殺し、王族に死ねと命じれば死なねばならぬ鉄の掟だった。   「嫌だ、早く乗れ!」   それに対する答えは遵守の言葉では無く反抗、それも言葉遣いすら無視した言葉だった、姫は家臣からそのような態度をとられた事など一度も無かった。   「何故……」   「それは」   姫は恋など知らなかった、政略結婚するのだから知らない方が幸せだと知っていたからだ、だから理由が分からなかった。   「それは世界中を敵に回してもアンタを守りたいからだ、だから騎士になったんだ!」
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