プロローグ

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June 23, 1995 気がついたら私は一人ぽつんと街中に立っていました。 初めてみる景色。 初めて見る空。 初めて見る人。 初めてだらけの今この瞬間、私は一体自分が誰で何者かがわからなかった。 「私…は」 何故私はここにいるのだろう。何故私は私の事を何一つ知らないのだろう。 「…このまましてても誰も助けてくれるわけないわよね」 そう判断した私はとにかく歩く事にした。 何故か裸足だったのが気になったけど私はわからぬ道をただただ自分が思うとおりに進んだのだった。 そして数分歩いていた時だった。 「足が痛い」 そんなに長く歩いてもいないのに足が痛み出したのだ。 裸足だからだろうとも思ったがそうでもないらしい。 多分記憶を失う前の私はあまり外を歩く事がなかったのだろう。 足首をさすりながら、私は一つの古びた小さな建物に目が止まった。 そこは人形を置いている店だった。 人形といっても種類があるがこの人形は人の大きさの人形を置いていた。 あまりにリアルで私は一瞬気分が悪くなりそうで。 その時店から誰かが出てきた。 「…オイルが切れた。まったくこんな時に」 「あ…」 中から出てきたのは若い青年だった。 そして私の声に青年が顔を上げる。 「っ!!」 「?」 青年が私を見て息を呑んだのを確かに感じた。 何故? 彼は私を知っているのだろうか。 「君…は」 「あの、私を知っているんですか?」 「……」 「あ、の…?」 「記憶がないのか?君は」 「え。あ…はい。気づけば記憶を失っていて」 「そうか…」 「あ…あの、どうしたんですか?私の事知っているなら」 「知らないよ」 青年がぴしゃりと言う。 寂しそうな瞳をしながら。 「すまない。一瞬マリアに似ていたから驚いてしまっただけだ」 「マリア?」 聞きなれない名前に首を傾げる。
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