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「切ない話だが、嫌いじゃない」
「兵士さんは本とか読みますか?」
読まないとわかっているのに聞いてみる。
しかし…
「あぁ、読むぜ」
「え」
意外な返答だった。
「えって失礼な姫さんだなぁ。俺だって本くらい読む。脳味噌が筋肉で出来ているとでも思ったか?」
「いえ、そんな事…」
否定は出来ない。
「…て言っても読破した記憶はないがな。大抵は10ページで終わる」
「そ…それって読んでいるっていうの?」
「一度も読まない奴よりは読んでいると思うけどな」
「まぁ確かに」
それも否定は出来ない。
「そんな感じで、俺は本を読むのが苦手だから人の話をきくのが好きなんだ」
「そんな感じってどんな感じですか?」
「とにかくそんな感じだ。分厚い本に読む気しなくても、その本の内容をわかっているやつからきいた方が頭に直接入って眠くならない」
「そうかな?私は詳しく内容を知りたいから本を読むんだけど」
「俺は内容が大体わかればいい。それにクリスティアの話は細かくてまるで横で本を読んでくれてるみたいだ」
「ふふ、じゃあ今度は違うお話をするね。まだまだお気に入りの本が沢山あるの」
「あぁ、楽しみにしてる」
そんな楽しい一時に割り込んできた一つの声が頭上に響く。
「クリスティア様、クリスティア様!寝ていらっしゃるのですか?」
頭上のクリスティアの窓から響く声は使用人の女性の一人。ドアをノックする音と何度も呼ぶ声に今日の幸せな秘密の時間が終わると思うと、残念に思えてくる。
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