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「彼も来てくれなくなった……アリアス」
アリアスはまだ三回しかあった事ない。会ったのはまだ少し幼かった頃だからきっと彼は忘れているだろう。
アリアスの両親がクリスティアの両親と昔からの友達で仲が良くて、たまにアスラティアにくる事があった。
「元気にしてるかな…」
元気にしているといえば白薔薇達もだ。
無理を言って一目がつかないところでいいから温室を作って欲しいと両親に言った事が一度合った。
最初は固く首を振っていたが、ある日突然それを承諾され、クリスティアは温室を手に入れる事に成功したのだ。
しかし人にみつかればまたすぐに部屋に連れ戻し外に出さないというのを条件に、クリスティアは花を育てながらも見つからないようにひっそりとしていたのだ。
しかしやっぱり花の匂いに誘われてか貴婦人の一人に見つかり1ヶ月ももたないままクリスティアは部屋に連れ戻された。
それからというもの温室へは行ってない。行きたくても行けない。こっそりアリアスに紹介した事が二人の幸せな小さな時間だ。
「でもアリアスは薔薇の匂い駄目だったわね」
鼻につくにおいといって顔をしかめていたのを今でも覚えている。
確かに薔薇のにおいは独特だから。
「はぁ…もう薔薇を育てる事も出来ないのね」
クリスティアは溜め息を漏らす。
その時だった。
「?」
窓の外にふいに目を向けると一人の男性が気持ちよさそうに腕を枕にして眠っているのを。
「気持ちよさそう」
羨ましい。
だけどなんでよりによってそこで寝ているのか。
まるで外に出られないクリスティアに自慢しているように感じて少し気分が悪かった。
「むっ…人の気を知らないで」
クリスティアは窓の外から目を離そうとした。しかしそれと同時に眠っていた男に声を掛けられる。
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