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「ちょーっとお姫様、無視しないでよ」
「っ!」
窓に目を向ける。
正確には窓の外にいる男にだ。
男は腕を伸ばし躯を起こしながらクリスティアを見つめている。横になっててさっきは気付かなかったけどこの人、兵士だ。
「そんな所で何をしているの?」
「みててわからない?昼寝だよ。ここの草気持ちがいいし、それに天気もいいし」
「だからって…」
そんな所で寝なくていいのに…
「はは、お姫様、ここ凄く気持ちがいいよ。君もどう?」
「む、お父様やお母様にきかされていない?私は外に出たくても出れないのよ」
「うん、知ってるよ」
あっさりと男は言う。
「だけどさ、言われたからってずっとそんな鳥籠の中にいるの?」
「え?」
「本当に嫌なら、こんな所にいるのが苦痛で外に出たいなら、どんな危険な事も覚悟して何が何でも外に出る方法を探すよな」
「……」
「出るのが怖いのか?お父様やお母様に叱られるのが、それとも危険な脱出で万が一怪我でもしたらという不安から?」
「そんな事…」
「なら大丈夫だよな、ここから飛び降りても」
「え?」
男は眩しいくらいの笑顔を浮かべて両腕を伸ばす。
「受け止めてやる。だからお姫様も一歩踏み出せよ。外に出たいんだろ?何もせず死ぬまでそんな鳥籠にいるつもり?」
「……」
でもだからって飛び降りるのは危険だ。
だけど彼にどこからそんな自信があるのか怖がる素振りもみせず真っ直ぐ私を見る。
「大丈夫…絶対受け止めるから」
「本当に…?」
「あぁ……お姫様みたいな軽い紙のような子なんて受け止めるのは簡単な事だよ」
「紙って、私そこまで軽くはないけど…」
だけどそう言われると少しほっとする。
だってそう言われたら絶対彼はクリスティアを受け止めてくれると思ったから。
「もし、万が一私を受け止め損ねたら、呪ってやるからね」
「あはは怖い怖い、大丈夫だよ」
クリスティアはまだ不安だった。
だけど一歩踏み出さなきゃ確かにクリスティアの日常には変化は訪れない。
だから…
「っ!」
「お、格好いいねお姫様」
口笛を鳴らし、男は笑った。
クリスティアは窓枠に足をかけ、飛んだ。
今クリスティアを支えるものは何もない。
ただちゃんと受け止めてくれるようにクリスティアは手足を広げて真っ直ぐに飛んだ。
「っ…」
怖くて、怖くて怖くて目を綴じたままで。
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