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「…お姫様とか王子様とか貴族って、偉そうでこういう事には臆病で何も出来ないと思ったけど……君は違うんだな」
何か言ってる。
だけど今のクリスティアにはわからない。
ただただクリスティアは彼が受け止めてくれるのを望んでいた。
そして…
「はい、キャッチ」
「っく…」
少し痛いが彼はちゃんと受け止めてくれた。
しかし…
「はは、軽い軽いぃいい…うわぁっ、とと!」
「きゃあっ」
クリスティアを受け止めたまま芝生に倒れ込む。
かっこつけて受け止めるとは言ったものの現実は違った。
「うぅ…あっははは、意外と女の子って重いんだな」
「っ、し…失礼な人」
仮にも一国の王女に重いなんて。
「はは、ごめんごめん。そんなに怒るなよ」
「お…怒ってません。それにお姫様ってさっきから。私にはちゃんとした名前があります」
「そうだったな。ごめんごめん。で、名前なんだっけ?」
「なっ」
「冗談だよ。クリスティア様だろ?」
「…クリスティアでいいわ」
「そう、じゃあ遠慮なくクリスティアと呼ぶよ」
「……」
軽い人
彼の第一印象は正直あまり良いとは言えなかった。
だけど羨ましいと思う。太陽のように眩しく、嫌な事や悩みがなさそうで、真っ直ぐで。
「貴方は誰?」
「ん?俺の事が気になるのかな?」
「っ…わ、私だけ名前を教えるのはずるいと思うの」
「それもそうか。じゃあちゃんと聞いていてよ。俺の名前はね……」
これが私と“テュール”の出会いだった。
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