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クリスティア達は、人には言えない秘密があった。
「夢みたいだわ」
あれから、出会ってからクリスティアとテュールはよくこうして二人でばれないように外でのんびりと過ごしていた。
目を綴じても青空が目の奥に焼き付いて離れない。
夢のようだ。
ずっと憧れていた。芝生の上で躊躇う事なくだらんと寝っ転がるのを。
「いいだろ?俺こうして寝るの、好きなんだ」
「うん、凄く気持ちいい。有難う」
「っ」
「?どうしたの」
「いや、お姫様の口から気持ちいいて言われるとなんか変な気持ちに…」
「何言ってるのよ」
呆れながらもこの心地よい気分にどうでもよくなってしまう。
「兵士さんってしょっちゅうこうしてさぼっては芝生の上でお昼寝するの?」
「まぁな。ってクリスティア、いい加減俺の名前覚えてくれ」
「ご、ごめんなさい。難しくて。えっとテールだっけ」
「違う」
「チール?」
「…違う」
「あ、わかったわ!チュールね」
「ちーがーうー」
大きく口をあけながら腕でバツを作る。
「まったく、これで五回目だ。テュールだよテュール」
「あっ、そうでした」
「そうでしたってそれも五回目なんだけど」
「ご、ごめんなさい」
クリスティアはどうも人の名前を覚えるのが苦手なようだった。それは最近気付いた事。
一度みた人物の顔は覚えられるのに、どうしたわけか名前は覚えられないのだ。
おかしな事だ。
テュールなんて覚えやすい名前なのに。それともあまり聞かない名前だから覚えられないのだろうか。
「…ごめんなさいテュール。怒ってる?」
「まさか、怒んないよそんくれーじゃ」
「良かった…」
心の底からほっとする。
「貴方に嫌われたら私またあの鳥籠の中にいられないといけないから」
「クリスティア」
「私一人じゃ外に出れない……臆病だから」
「クリスティアは臆病ではない、臆病なら窓から飛び降りたりしない。でも一人じゃそれは危険だな。受け止める相手がいないんだからな、あはは」
「ふふ、そう言われればそうね」
風がゆらゆら
青空に浮かぶ雲がゆっくりと移動するのを眺めながら気づけばクリスティアとテュールは無言で空を見上げていた。
太陽の暖かい匂いに包まれながら目を綴じる。
とても気持ちが良くて眠くなってきた。
「もっと…」
「?」
「もっと私達、早く出会っていれば良かったわね」
「クリスティア?」
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