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「でも目を覚ましたら現実。あの夢の中にずっといられたらと思った。そんな時、どこから迷い込んだのか一羽の鮮やかな虹色の小鳥がいたの。その鳥はまるで導くように少女の目の前で翼を羽ばたいたわ」
するとどうした事でしょう。
壁がまるでないように透けて小鳥が通ったではありませんか。少女も後に続いて壁を抜けます。
「するとそこは外だったんです」
「小鳥が少女の願いを叶えたんだな。それで最後はどうなったんだ?」
「最後は……」
「?」
そこでクリスティアが口ごもる。
それが何故なのかテュールは理解できなかった。
「最後は……その少女の両親が望んでいた夢想なの」
「どういう事だ?」
「少女の躯が弱いって言ったでしょ?そして不思議な小鳥と出会ったのは本当。だけどそこからは両親の夢想。少女は落ちていた虹色の羽の側で倒れて目を覚まさなかったのよ」
「死んだのか?それに絵本にしてはその……なんか珍しい終わり方だな。ハッピーエンドじゃない」
「そうだね。少女の幸せな部分は両親がみた夢オチという、ルイス・キャロルの“不思議の国のアリス”の結末に似ているけど、まだアリスの方が救いあるわね」
それでもクリスティアはその絵本が何故か好きなのだ。
まるで絵本と自分を重なり合わせているみたいに。
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