かたつむり

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或る日、昭彦がいつもの様に午後6時に帰宅すると玄関に見慣れない靴が有った。 妻の洋子が珍しく、友だちを呼んでいたのだ。 「おかえりなさい。待ってたのよ」 「お邪魔してます」 何かと思えば生命保険の話だった。 女性の保険屋は多い。 初めは警戒していた昭彦だったが、妻の友だちという事もあり断りにくいという事と、子供が産まれるのだからと言われた事。そして何より妻の洋子が、かなり強く契約を望んでいる事を熟慮し、昭彦は観念してハンコをついた。 子供が出来ると途端に男は責任が重くなる。 (本当に父親になるんだなぁ) 昭彦は、今更の様だが父親になる心構えをしなくてはと、思った。
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