かたつむり

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妻の洋子は嫌っている様だが、昭彦の頭の中は、既にカタツムリの事で一杯だ。 子が産まれる事に関しては真実嬉しいが、実際に産まれてくるのは、まだまだ先の話。 妻の腹を見てもこれといった変化も無い。 男が父親になった実感を感じるのは出産が終わってからだろう。 そんな夫の態度に妻である女が、不安や不満を抱く話はよく有るが、大抵の男は好き勝手に浮気やギャンブルをするものだ。 松沢昭彦の場合は、まだ許される範囲なのでは、なかろうか。 事実、昭彦自身もその様に考えていた。 (明日の休みは、カタツムリの本を探しに行こう) 専門的なものは近所の本屋では、手に入らないかも知れない。 それでも、都心まで足を伸ばせば、きっと良い本を見つけられるだろう。 新たな楽しみを手に入れた昭彦は、仕事中でも思わず頬をゆるめる程、カタツムリに夢中になっていった。
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