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「おかえりなさい。ずいぶん遠出してきたのね」
妻の洋子は嫌味たっぷりに昭彦を迎えた。
「ああ。だが良い本があったぞ」
「そう。今度は読書なさるのね。ごゆっくり」
と、言った後に洋子はフフンと鼻で笑う。
昭彦は、この洋子のクセが嫌いだった。
含みを持たせて馬鹿にした様にフフンと笑われると、昭彦はプライドが傷付いた気がするのだった。
「その笑い方、やめろって言ってるだろう」
洋子は、チラリと一度だけ昭彦を見ると、その後はあきれた顔をして週刊誌を読み始める。
(言いたい事があるなら言えばいいんだ)
昭彦は昭彦で、購入してきたばかりのカタツムリの専門書に目を落とした。
きっと日が落ち、暗くなるまでは、二人の間に沈黙が続くだろう。
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