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都会ではきっと相変わらず俺の行方を追っているだろう。
指名手配にはなっていないが、警察は俺を探している。
たまにテレビやパソコンなどでそういう情報を見るのだ。
携帯は圏外だから役にたたない。
ただ時間を見るだけの道具に過ぎない。
あの日…あの女を殺してから俺は赤ん坊を抱え、母親だった女の家に行った。
あいつは俺を警察に売ったくせに俺が来た途端に嬉しそうに近づいてきた。
どうせ考えてる事はわかっている。
金しか頭にない愚かな女を俺は今度こそ今までの自分と決着つけた。
女は皆同じと知り、もう躊躇いすらなかった…
俺はようやく終止符を打った。全ての根源を断ち切った…
あっけなく死んだ。
案外楽勝だった。
何故今まで殺せなかったのか……俺は自分を恨む。
そしてその後家に帰り、有り金全部とキャッシュカードと荷物を軽くまとめて車に向かう。
なるべく車で遠くまで向かいたかったのだ。
だから車に赤ん坊を乗せた。途中でミルクとおしめとほ乳瓶を買う。赤ん坊が居心地よく眠れるように揺りかごも買って。
ミルクを飲ませる時はコンビニのポットを借りてミルクをつくり、赤ん坊に飲ませてやった。
記憶が正しければ赤ん坊はちょっとした事で泣いてしまう敏感な生き物。しかしこの赤ん坊はおとなしかった。ぐずる時もあるがすぐにおさまる。
そうしているうちに俺はこいつをつれて長いドライブの旅をし、気付けば雛沢村についたのだった。
そして五年たって今にいたる。
赤ん坊だったあいつは今では言葉を喋れて歩く事もできる子へ育った。
とても素直で愛しい娘。
素直で無邪気で汚いものを知らない無垢な少女。
俺にとって唯一の救い。
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