蘇る忌まわしい記憶…

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それから一週間…ニ週間と私は白い病室で生活していた。 特にこれといった尋問とか診察はない。 ただ精神を落ち着かせる為にいるようなもの。 私は一体いつまでここにいなきゃならないのか… そんなある曇り空の日だった。 「あの人の家に?」 突然医者と母…そして彼を捕まえた刑事さんが私にいった。 「見せたいものがありまして。もしかしたら空白の間の出来事を思い出すかもしれない」 「……」 確かにあの人との空白で何があったのか気になる。 でもそんなのなくたって私はあの人が好き。だから見なくてもいいのだ。 ―違う…見たらそれが偽物とわかるから嫌なんでしょ? 「黙って…よ」 「?どうしました」 「っ……」 私の気持ちは偽物じゃない。頭に喋りかけてくるやつにそれを教えてやる… ―偽物なのに… 笑った気配。 私は頭を押さえながら小さく呟いた。 「行きます……私の気持ちは…本物だから…」 何故…一瞬躊躇いが生じたのだろう。 本物ならこんなに苦しむ筈ないのに……自分が…わからない。 彼の家…懐かしさに胸が痛む。そんな感傷に浸る機会も与えず刑事の足が進み、私は追いかけるしかなかった。 「ここです」 「?」 そして刑事は地面をみた。 ただの地面に何があるのか。 刑事はカーペットをめくる。すると地下へ続く階段を見せた。 「ち…か?」 「ご存知ありませんか?」 「ないわこんな…地下があったなんて…」 「彼に攫われた女性は始めにこの地下室に監禁され、酷い拷問じみた事をされるらしいですが……貴方は違うのですか?」 「……」 「いえ…貴方も始め彼が怖いといった。という事は貴方も地下室に何日か…いや何週間か……監禁されていたんですよ」 「ち…」 違う…と、何故否定出来ないのだろう… 「さぁ、進みますよ」 「……」 足が竦む。 頭痛と動悸が激しく苦しい… 行きたくない。 行っちゃ駄目… 私の気持ちは本物……もういいでしょ? ―なら行きなよ また誰かが囁く。 ―本物なら行ける筈。貴方は忘れていたものを思い出したら彼が嫌いになるの?本物なら思い出しても変わらない筈……行きなよ…自信あるんでしょ好きだって…
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