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「飛鳥、桜見てたな。」
「それがどうかしたか?」
別にいいだろ、野郎が桜見てたって。
「そういうことじゃない。 描くのか? 桜を。」
大原が言った "描く" とは絵のことで、それは俺が美術部で絵を描いているからだ。
「ん………、どうだろ。 まだ決めてないな。」
「描いてくれよ、桜。 俺は結構好きだからさ、桜。」
俺は苦笑して、考えとく。 と言いながら一つの思い出を心に浮かべていた。
あれは中学一年生、元々人付き合いがあまり上手でなかった俺に、放課後、美術室で一人で絵を描いていたところを大原に話しかけられたのだ。
「上手いな。 飛鳥だっけ、名前。」
後ろから急に声をかけられた。
驚いて振り向くと、サッカーの練習後で上下ジャージ姿の大原がいた。
「そうだけど…………。」
どうやら絵は好きだが、自分は下手くそで、上手な人に憧れのようなものを持っていたらしい。
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