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「こんばんは」
「……こんばんは」
その時、一陣の風が吹き抜けた。風の強さに思わず目を閉じる。
とんっ、という音がすぐ側で聞こえたような気がして、僕はゆっくりと目を開けた。
「やっと答えてくれた」
細身のジーンズと真っ白なシャツ。そんなどこにでも溢れている出で立ちで、彼女は僕の目の前に立っていた。
両手を軽くポケットに突っ込んで、目を細めて笑っている。
――この薄暗い中で、なぜ彼女の表情がこんなに鮮明にわかるんだろうか。
そしてその表情が、なぜこんなにも記憶にすり込まれるんだろうか。
きっと一生かかっても、その答えはわからないのだろう。
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