出逢い

4/13
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「こんばんは」 「……こんばんは」  その時、一陣の風が吹き抜けた。風の強さに思わず目を閉じる。  とんっ、という音がすぐ側で聞こえたような気がして、僕はゆっくりと目を開けた。 「やっと答えてくれた」  細身のジーンズと真っ白なシャツ。そんなどこにでも溢れている出で立ちで、彼女は僕の目の前に立っていた。  両手を軽くポケットに突っ込んで、目を細めて笑っている。  ――この薄暗い中で、なぜ彼女の表情がこんなに鮮明にわかるんだろうか。  そしてその表情が、なぜこんなにも記憶にすり込まれるんだろうか。  きっと一生かかっても、その答えはわからないのだろう。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!