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しばしの待ち時間の後、Mが診察室へと呼ばれた。
一体何分ぐらいで出てくるのか…?
それは、クライアントの症状や、生活環境などが複雑なのか、そうでないかを推し量るよい目安になる。
…30分ほどして、Mは診察室から出てきた。手にはハンカチを握りしめている。
どうやら彼女には、言うに言われぬ深い事情がかくされていそうである。
私はドキドキと心臓が高なる音を自覚した。
そして、彼女の後から診察室を出てきたドクターから、カルテと、一つの指示を受けた。
「彼女にはカウンセリングが必要かもしれない。女性で、割と年が近い人が良いと思うが…」
ドクターはうーんと首をひねった。
「先生、井口さんはどうでしょう?」
私が言うと、ドクターは大きくうなづき、井口さんを呼ぶように指示した。
井口さんは私と同い年の臨床心理士だ。
優秀な彼女はクライアントからも評判がよいし、Mの話も上手く引き出せるはずだ。
井口さんは、ドクターに紹介されてMと挨拶をした後、次の予約日を決めて、また席を外した。
私はその様子を横目で見ながら、カルテの処理にとりかかる。
初回なので、とりあえず軽い安定剤と睡眠導入剤が処方されていた。
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