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一つ、音を零した金色のかたつむり。
また一つ、音を奏でていく。
また一つ、音を紡いでいく。
小さな金色のかたつむりの音は、雨の音に溶けていく。
小さな金色のかたつむりの音は、雨の音に混じっていく。
雨粒の音はとても大きくて、金色のかたつむりの音はとても小さい。
それは かすかにしか聴こえない、小さなメロディー。
それでも、金色のかたつむりは音を奏でる。
それでも、金色のかたつむりは音を紡いでいく。
だって、金色のかたつむりは知っているから。
自分が雨の奏でるオーケストラの一員だということを。
金色のかたつむりのメロディーが溶けて、曲が作り出されていることを。
誰も気づかなくても自分はここに在り続けると、金色のかたつむりは笑った。
だから、今日も金色のかたつむりはメロディーを奏でる。
まだ止まぬ、雨の中で。
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