金色のかたつむり。

2/2

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
一つ、音を零した金色のかたつむり。 また一つ、音を奏でていく。 また一つ、音を紡いでいく。 小さな金色のかたつむりの音は、雨の音に溶けていく。 小さな金色のかたつむりの音は、雨の音に混じっていく。 雨粒の音はとても大きくて、金色のかたつむりの音はとても小さい。 それは かすかにしか聴こえない、小さなメロディー。 それでも、金色のかたつむりは音を奏でる。 それでも、金色のかたつむりは音を紡いでいく。 だって、金色のかたつむりは知っているから。 自分が雨の奏でるオーケストラの一員だということを。 金色のかたつむりのメロディーが溶けて、曲が作り出されていることを。 誰も気づかなくても自分はここに在り続けると、金色のかたつむりは笑った。 だから、今日も金色のかたつむりはメロディーを奏でる。 まだ止まぬ、雨の中で。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加