第一章

4/7
前へ
/173ページ
次へ
 「おっ。帰ってきたようじゃの?」  「お帰り。なんだった?理事長の話。」  「大した事ではありません。」  ……絶対嘘だ。顔を見た瞬間、狸と薬嗣は思った。  「なーに隠してるんだよ。」  「さっさと、吐くんじゃな。坊。」  自分の大切な人、ナンバーワンとナンバーツーに言われ、苦笑しながら秘書が白状した。  「教授、今月からお仕事増えますよ。」  「?何故。」  「今、理事長から言われてきました。高等部から、生徒を特別に受け入れるそうです。」  以外な言葉だ。  「どういうことだ?」  「……そうですね、簡単に言えば、体験入学のようなモノです。高等部の生徒が、このまま、大学に進学するより、前もって体験させ、自分がどんな事を学びたいか、考えて貰うのが目的だそうです。」  「なるほどね。……で、宗が機嫌悪いのは、何故かな?」  「……教授の講座にも、高等部の生徒を受け入れるそうです。」  眉間にシワをよせながら秘書は答えた。  「………何で、坊が不機嫌なんじゃ?確かに仕事が多少増えるだけじゃろ?」  ……だけ?冗談じゃない。折角、教授と距離が近付いて、これからという時に!  「老師。万が一、教授の事を狙うような奴が、交じっていたらどうします?」  思っている黒い感情を一切出さずに、秘書は答えた。  「…そうじゃな。お前が蛇を倒して、小僧がみずちを誕生させたのは、神々に知れ渡っておる筈じゃからの。」  「はい。だから心配なんです。」  「あ、俺、その話引き受けたい。」  教授が思いもよらない事を言い出した。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1108人が本棚に入れています
本棚に追加