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「おっ。帰ってきたようじゃの?」
「お帰り。なんだった?理事長の話。」
「大した事ではありません。」
……絶対嘘だ。顔を見た瞬間、狸と薬嗣は思った。
「なーに隠してるんだよ。」
「さっさと、吐くんじゃな。坊。」
自分の大切な人、ナンバーワンとナンバーツーに言われ、苦笑しながら秘書が白状した。
「教授、今月からお仕事増えますよ。」
「?何故。」
「今、理事長から言われてきました。高等部から、生徒を特別に受け入れるそうです。」
以外な言葉だ。
「どういうことだ?」
「……そうですね、簡単に言えば、体験入学のようなモノです。高等部の生徒が、このまま、大学に進学するより、前もって体験させ、自分がどんな事を学びたいか、考えて貰うのが目的だそうです。」
「なるほどね。……で、宗が機嫌悪いのは、何故かな?」
「……教授の講座にも、高等部の生徒を受け入れるそうです。」
眉間にシワをよせながら秘書は答えた。
「………何で、坊が不機嫌なんじゃ?確かに仕事が多少増えるだけじゃろ?」
……だけ?冗談じゃない。折角、教授と距離が近付いて、これからという時に!
「老師。万が一、教授の事を狙うような奴が、交じっていたらどうします?」
思っている黒い感情を一切出さずに、秘書は答えた。
「…そうじゃな。お前が蛇を倒して、小僧がみずちを誕生させたのは、神々に知れ渡っておる筈じゃからの。」
「はい。だから心配なんです。」
「あ、俺、その話引き受けたい。」
教授が思いもよらない事を言い出した。
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