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「……理由は?」
静かに宗が問いただす。表情は穏やかだが¨答えによっては、どうなるか分かりませんよ?¨と、無言の威圧を醸し出している。だが、教授は全然空気が読めていないのか、楽しそうに言葉を続けた。
「俺さ、去年、理事長に頼まれて、中等部に民族学の講演しに行ったんだよな。その時に、お世話してくれた子達の中に、歴史とか、伝統文化、伝説が凄い好きな子がいてさ。大学迄進めたら、俺の講座に入りたいって言ってくれたんだよなあ。その子、今年から高等部なはずなんだよね。」
世程嬉しかったのか、教授は、全開の笑顔で語った。
「ほー。面白そうな子じゃな。」
「だろ?見た目は、今時の子だけど、言葉遣いも丁寧で、きっちりした子なんだよなあ。……それに……。」
不意に教授は、押し黙る。
「なんじゃ?言うてみろ。小僧。」
「……うん。何か寂しそうなんだよな。それと、俺の体質、効かなかった。」
沈黙が訪れる。
「………体質が効かなかったじゃと?」
狸は、確かめるように、言葉を繰り返した。
「ああ。他の子達は、何となく、ポーと、赤くなっていたけれど、その子だけは全然、平気だった。たまに居るんだよなあ、俺の体質効かない奴。」
俺の体質。老若男女問わず、自分の虜にしてしまう、とんでもない特異体質だ。狸の説明によると、俺の魂は力が強い神様で、人間の身体が、その強い力を押さえ込めなく、神気がもれて、普通の人間に影響しているらしい。その辺りも自分には記憶がないのでさっぱりだが。
「ほうほう。それは是非ともワシも会ってみたいの。」
狸は、目を細めて頷いた。
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