第一章

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第一章

 全てに、絶望していた。  「……このまま雪に埋もれたら、凍死するかな。」  …俺は雪の上に寝転がっていた。その上に雪が積もる。  「………まあ、良いか。」  目を閉じる。……最近は、殆ど眠る事は無い。凍死するためには、眠らなければ駄目だったかな?  「…人の家の庭先で、何をしている。」  声がしたので、眼を開けて見る。……そこには、一人の青年が俺を見下ろしていた。  「全てに絶望したから、凍死しようと思って。」  俺は正直に答えた。  「ふーん。死ねそうか?」  「どうだろう。死んでもおたくには、関係ないだろ?」  なんだこの男。ほっといてくれよ。  「関係?…此処は、俺の家の庭だ。もし、お前が凍死したら、役所に届けてなければならない。そうなると、色々聞かれるだろうな。……面倒だから、余所の所で凍死してくれ。」  「……………なんだそれっ!優しくないぞ、あんた。」  あまりにも、ハッキリ言われて俺は、思わず笑ってしまった。  「なんだ。絶望している割には、笑えるじゃないか。」  「……あれ?…あんたが正直すぎるから、笑ったんだよ。」  「そうなのか。それは悪い事をしたな。」  本気で謝る。大丈夫かこいつ。  「詫びにお茶でも、ご馳走しよう。付いてこい。」  返事を待たず、男が屋敷に戻る。  「お茶より、酒が飲みたい。」  体を起こして、俺は言った。  「残念だが、俺は酒は飲まん。嫌なら飲むな。」  「……飲みますよ!」  俺は立ち上がり、俺の後を追った。  その夜、俺は久々に眠った。腕の中には、優しくない男を抱きながら。
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