プロローグ

3/11
前へ
/11ページ
次へ
車の鍵を開けドアノブに手をかけた時、僕の車の前方に大きく揺れる白い影が見えた。 不思議に思った僕はゆっくりと覗き込む。 その影は、地面にしゃがむ白いスーツ姿の女性だった。 雨の中傘もささず、長い髪が雨粒に濡れ顔に張り付いている。 何かを捜しているのか、僕の存在には全く気が付かない様子だ。 彼女が居ては車を動かす事も出来ない。 「なにかお探しですか?」 僕が仕方なくかけた言葉に、彼女は振り向いた。 「ハンコを落としたみたいで・・」 どれくらいの時間捜していたのか、彼女の服はずぶ濡れで、髪から滴り落ちる雨粒が、彼女の必死さを物語っていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加