4人が本棚に入れています
本棚に追加
狭い駐車場だ。
ここで落としたのならすぐに見つかる。
だが、視界をふさぐ雨に加えて外灯もないのでは、困難なのは明らかだった。
彼女が哀れに見えた僕は、車のエンジンをかけるとライトを点けた。
ついでに、傘を取り出し彼女に手渡す。
「使って下さい。風邪でもひいたら大変だ」
「ありがとうございます。助かります」
彼女はニッコリ微笑むと傘を受け取った。
「あ!」
僕も捜してあげようと車の前に移動した時、彼女が小さく声をあげた。
「ありました!よかった・・」
よっぽど大切なハンコだったのだろう、彼女は拾ったハンコを大事そうに抱え、心底喜んでいる様子だった。
最初のコメントを投稿しよう!