プロローグ

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狭い駐車場だ。 ここで落としたのならすぐに見つかる。 だが、視界をふさぐ雨に加えて外灯もないのでは、困難なのは明らかだった。 彼女が哀れに見えた僕は、車のエンジンをかけるとライトを点けた。 ついでに、傘を取り出し彼女に手渡す。 「使って下さい。風邪でもひいたら大変だ」 「ありがとうございます。助かります」 彼女はニッコリ微笑むと傘を受け取った。 「あ!」 僕も捜してあげようと車の前に移動した時、彼女が小さく声をあげた。 「ありました!よかった・・」 よっぽど大切なハンコだったのだろう、彼女は拾ったハンコを大事そうに抱え、心底喜んでいる様子だった。
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