幻影に視える彼のピエロは笑う

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 寝苦しい夜に、聞こえる悲鳴。  空はまだ暗く、時計の針は午前2時。  あぁ……時間が来た。呪われた運命と縛られた未来。  オレは毎日、日が廻る事が嫌に成って来て、布団に蹲る。  其れでも悲鳴は止むことは無く、オレを責める様に強く成って逝く。  道化者は己の愚かさに、頭を抱える。  張り付けられた笑顔を、元来から持つ冷徹さを、昼夜で使い分ける。そんな生活を続けて17年、もう限界が近いかも知れない。 〈楽に成れると思うなヨ?〉  道化のピエロが、卑しい笑みを浮かべる。  救けなんて来ないと、オレは悟って窓枠に手をかける。  猫の様にしなやかに、俊敏に夜の町を走り廻る。 「黒猫・鞋瑠【アイル】、今日こそ捕まえてやる」  白い服に身を包んだ短い黒髪に眼鏡の男が、オレを指差す。  黒い服を来たオレとは正反対で、明るい表情を浮かべ、銃を取り出した。  オレは鼻で笑い、刀を構える。  白猫は黒猫を嫌い、本来仲間の筈のオレの首を2年前から狙っている。  白猫の明るさがオレを苛付かせ、黒猫の暗さが奴の心を燃やす。
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