本編・男

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ーー極北端[ネグリア] ーー極南端[カノン] この二つの国が二強とされ、政権を握っているのには理由があった。 実のところ両国ともに、国土、住者数、軍備などの、国の強弱を決定する主要要素においては、他の三国とそれほどの差は存在しなかった。 これは[世界終焉]後、再び争いを起こす事を恐れたコーカス(人類)が、それを避けるために考えられた措置の一つによるものである。 五大国のいずれかの国が万一暴走しようとも、残り四大国が鎮圧するシステムで、それを作り上げるためには、その国間に歴然の戦力差があってはならなかったのである。 このシステムのおかげで、互いの国が抑止力となり、この1000年間、多少の衝突があったものの、平和を維持できたのだ。 では何故、先に挙げた二大国が他より権力を持っていたのか?と言う疑問は当然である。 しかし理由は単純であった。 ただの軍備の差である。 しかし兵器の総数は先のシステムで変わらないはずである。 ーーーそう、数は変わらないのだ。 二つの国には、それぞれに [孤国]という名の兵器が存在していたのだ。ただそれだけである。 ーーーが、それは他を超越する圧倒的な『生物兵器』ーー それを一つ保有していれば、軍備力は倍になったと言っても過言でない。 つまり[孤国]の基本定義、 それは『一体で一国の兵力と同義』なのだ。 そして何より驚愕すべきは、この『生物兵器』はコーカス…つまりーーー ーーーただの独りの人間であったと言うことか 無論、人類に毛が生えた程度のコーカスには、到底不可能な事であり、現在世界に二人しか存在していない。 それはそうだ。 誰も彼もがそんな物騒な力を持っていては、世界は見る間に壊滅するだろう。 しかし、逆に言えば『二人存在している』のだ。 ーーー何故?理論をすっ飛ばし、『最強』を行使できるのは空想の世界だけであるはずだ やはり、いや、それ以外は有り得ない。その理由は[カロイドニウム]だ。 [世界終焉]後1000年もの間、数多くの研究者が詳細を研究しても未だその本質が明らかでない正体不明の未元物質。 ではなぜ、1000年も経った今なのか。
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