本編・女

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当時、まだ[孤国]は余り知られた存在ではなかった。 具体的な力量すらも解らず、[孤国]と言う名称も無かったのだ。 そもそも[孤国]も誕生の仕方は何の変哲もない。 どころか、幼児期ではただ少し力を使うのが上手いコーカスに過ぎないのだ。 が、しかしーーー ーーー齢が五歳を過ぎた当たりからかーーー ーーーその圧倒的力の片鱗を見せ始めるのだーーー ここで考えて欲しい。 今まで誰もが一定の範囲の中で力の高めあっていたグループーーーつまり国や、もっと大きな単位、コーカスという民族ーーーの中に突如として他を圧倒する存在が現れたら… その存在を周りーーいや、国は安易に大きな戦力だと喜ぶだろうか? 答えはNOだ。 コーカスは元々人間だ。 人間と言う生き物は自らより強く、圧倒的なものを畏怖する。 それが例え、まだ年端も行かない小さな子供だったとしても、だ。 そしてそれはもちろん[孤国]も例外ではなかった。 その頃はまだ、[孤国]は畏怖の対象であり、国が抱えた爆弾だったのだ。 所謂「できれば速やかに消去したい存在」である。 しかし何の罪もない者を殺すなんて事をしては、それこそ国民から大変な批判をかうだろう。 [孤国]を恐れる者は確かに多かったが、この人道的、平和的が土台であるこの世界では、他国からも多大な批判をうけることはまず間違いなかった。 何か、何でも良いから、理由が必要だったのだ。 それはどんな些細なことでも良かった。 そして[孤国]を消去する機会は訪れたのだ。 それがこの実験の正体。 戦力調査と言うのは言い訳に過ぎない。 殺してしまいたかったのだ[孤国]を。 死んで欲しかったのだ[孤国]と言う存在に。
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