本編・女

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バリツの最期は早かった その小さな子供が通り過ぎた位置に滞在していたバリツ軍の軍隊は次々に壊滅した。 ただし、壊滅したのはその子供に攻撃を仕掛けた軍隊だけだった ーーーそして遂には… バリツの軍事本部が破壊されーーー 日本列島の約半分の面積を誇り、五千万という国民数を保有する軍事大国が、たった一人の「小さな子供」に蹂躙され、壊滅したのだ。 攻撃を仕掛けた全ての兵士、市民がこの世から姿を消した。 核兵器を使うか?などという議論は……その議題が持ち上がった時には既に、全ての原子力研究所が破壊されていた。 極北端ネグリアが[孤国]を送り込んでから、僅か五日後、ほんの数日前までこの世界の脅威であった一つの大国が、消滅したのだ。 バリツで保護され、ネグリアに帰還したその子供は、国の軍隊に加えられ、しかし何事もなかったかのように前の生活へ戻った。 何故そんなことが出来たのか? 国が放置する筈はないのに? いや…… 放置する以外方法が無かったのだ。 先の出来事でその子供が『一つの国を凌駕する力』を秘めていると立証されたのだから。 暗殺も提案されたが、下手に手を出せば自らの国をも滅ぼしかねない力の前に、実行に移すことは出来なかった。 上の役人がそのような事を議論している内に、その子供は成長すると共に様々な功績をあげた。 時には戦争を仲介し、時には市民の反乱を和解によって鎮めた。 凶悪なカロイドを平然と打ち倒し、地球のほぼ反対側にいる、もう一人の ーーー[死神]と二つ名を持つーーー [孤国]と世界を調律した。 後に『一つの国を滅ぼした』と言うことに由来し、その[孤国]は[国殺し]と言う何とも物騒な二つ名でよばれるようになったのだ。 [孤国]の基本定義である 『一体で一国と同等の力を持つ』 は、正確には間違っている 実際は 『神に近しい力を行使する者』 神に近しい力を振るうコーカス。 そんな二人の[孤国]の現在の素性を両方共に知る者は… 幸が不幸か、この世界には存在しなかった
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