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ーー自分は一段階、皆より劣っているーー
これが[死神]の持論だった。
いつ確立されたモノかは自身も覚えてはいないが、その考え方は、自らの力が増すごとに根付いていったのは覚えている。
[死神]は漆黒のコートに深く被ったフードと言う、いかにも怪しい服装で、目的地へと続く森の一本道を歩いていた。
シグナとの通信もついさっき途絶え、今はバラード調の曲を聞いている。
目的地というのは勿論、[国殺し]との決戦の舞台。
この先の国無しの町の更に先。
大きな湖の湖畔だ。
[死神]は小さく欠伸をした……そしてフードで隠れた顔をしかめる
(……我ながら、何て緊張感がないんだ…)
[死神]はため息をついて、舗装などされているわけもない、路傍にあった石に腰を掛けた。
現在時刻は月の位置からして午前二時頃か。
([孤国]対[孤国]か…。公式試合なら、スタジアムは余裕で満員だな…)
[死神]は正直、いや、当然、この戦いに乗り気ではなかった。
世界にたった二人の[孤国]。
[国殺し]はいうならば、唯一の同朋なのだ。
「国のために戦え……かぁ。
……逃げちゃおっかなぁ」
そんな事を呟きつつも、カノンを出るときにヘヴィに貰った[国殺し]に関する資料を読み始める。
(……推定身長2メートル、推定体重160キログラム。筋肉に覆われた肉体を持つ巨漢。巨大な斧を武器として、戦う………)
そこで[死神]は、にへらとニヤけた。
(お、王道だ……びっくりするほど王道だ……なんか、凄い勝てる気がする……。
これが事実なら、見間違いはあり得ないな…。)
スラスラと資料を読んでいき、最期のページに差し掛かりーーーー
ーーーそしてまたニヤけた。
(…こんな所まで王道ですか……シグナ達も古いな…)
[死神]は立ち上がって、また森の一本道を歩き出した。
国の為でなく、自分にいつでも声援を贈ってくれる仲間のために。
その足取りは、先程より幾分速かった。
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