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ーー自分が何なのか分からないーー
それが[国殺し]の、人生の命題だった。
そんな疑問を抱いたのは何時だったかは、いまでも嫌になるほど覚えている。
頼んでもいないのに、毎晩夢に見る程だ。
壮大な崖。
大地が割れて、奈落の底が見えるような崖だ。
そんな全く人影の無い岩道を歩く人影。
ベージュのコートを纏い、フードで顔が見えない。
ただでさえ、こんな所に居る人影は怪しいが、更に異彩を放っている物があった
鎌。
死神が持っているような、柄の長い、全長2メートルを超える鎌をたすきにして背負っている。
体格は小柄な事も合わさって、その怪しさ爆発である。
そう、その人影が[国殺し]だ
「…ぅ」
小さな唇から今にも消え入りそうな溜め息を吐いた。
(あーあ、[死神]かぁ。私、もしかしたらもう直ぐ死ぬのかもしれないのね。)
……たった一瞬だが、寂しそうな顔になった。
(さっきは強がって見たけど、独りになるとね……)
足取りは意志と関係無く重くなり、最終的にはとうとう座り込んでしまった。
抱えた膝の上に顔をのせてフードを更に深く被る。
足下まであるベージュのコートはスッポリと[国殺し]を包み、表情は分からない。
(まだ…死にたくない…)
しばらくじっとしていたが、このままでは何の解決にもならない。
緩慢な動作で、情報部から渡された[死神]に関する資料を取り出して、目を通していく。
(……推定身長2メートル、推定体重160キログラム。筋肉に覆われた肉体を持つ巨漢。巨大な斧を武器として、戦う………)
そこで[国殺し]は、にへらとニヤけた。
(お、王道だよ……びっくりするほど王道だわ……なんか、凄い勝てる気がしてきたかも……。
これが事実なら、見間違いはあり得ないよね…)
大抵、筋肉でガッチガチで斧を振り回してる、如何にもな奴は弱いのだ。
コレは[国殺し]の今までの経験則からも立証済みだった。
「よし。うん、なんかやれる気がしてきた!」
[国殺し]はそう呟いて立ち上がった。
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