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二人の[孤国]が、それぞれの想いを抱きつつ、決戦の湖畔に向かっている頃ーーー
ーーー人が、落ち葉や枝を踏みしめる音が響くーーー
まさに決戦の湖畔を囲む森林の中を動く影。
それも一つや二つではない。
足音からして何十、いや、何百もの数。
動物ではあり得ない、不自然に規則正しい足音は、時間と共に増えていく。
『…国無しの町の湖畔…』
『…間違いない』
『…国務防衛情報統括局から‘漏れ’だ…間違いない』
『……しかし、我々でどうにかなるのか…?』
『……何を言うか……この世界は革命を求めているんだ…』『…これは我々が待ち望んだ決定的なチャンスだ……』
『我々[国無き者]が、第三勢力となり、他国と渡り合うには……[孤国]の存在は絶対……』
ーーー国務防衛情報統括局ーーー
文字通り、各々の国が所有する重要国家機関である。
職員は殆ど存在せず、その管理はほぼ全て情報統括端末が請け負っている。
その性能は現在のスーパーコンピューターの比ではない。
宇宙空間に存在する平均5機の演算システム衛星と連動しており、この惑星の全事象の40%以上を、常時に把握している科学・化学技術の結晶である。
そんな化け物のような情報統括端末にも、やはり‘穴’があるのだ。
どれほど精密に作ろうとも、どれほど工夫を凝らそうとも…
…やはり、人間の産物が完璧に成りうる事はないのだ。
それは人類が[コーカス]に成ろうとも、変わることのない摂理だった。
その‘穴’から、情報が漏れたのだ。
[孤国]の決戦の詳細事項が。
僅かな統括の‘穴’から、奇跡的確率で漏れたその情報は、インターネットと言う情報の海の中に紛れ込み、完全に同化した。
それがまた、奇跡的確率で、国を失った反政府組織である[国無しの民]の情報網に引っかかったのだ。
偶然に。奇跡的確率で。
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