挿入章・魔法・正体

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コレは1+1が何故2なのかを聞いているようなものだが、その謎を‘情報操作’の能力に目覚めたコーカスが解明したのだ。 通常、コーカスは炎や水、風といったものを操る特性に目覚めるのが普通だ。 彼らは、別に無から有を作り出すような、メルヘン溢れる魔法使いではない。 彼らは遺伝子内に存在する[カロイドニウム]によって、無意識にこの惑星のある次元の裏側にある別次元に情報を送信しているのだ。 その裏側の次元が[情報断層]であり、その世界が、コーカス…人類の住む次元の全ての事象を計算しているのだ。 枯れ葉が一枚落ちる度に、その次元では無数の[数式]が展開され、計算し、その枯れ葉が物理的に間違わないように地面まで誘導する。 風が起きれば、移動する粒子一つ一つに数式が展開され、その風に影響される事象にも数式が対応していく。 人が話せば、[情報断層]では無数の数式が対応して、声量、高低、質を瞬時に読み取り、正確な音を誘導しているのだ。 まさにこの次元と表裏一体の次元。 それが[情報断層] つまり、この[情報断層]で情報が増えたり減ったりと更新される瞬間は、生命が生まれたり、死んだりする瞬間だけなのだ。 この次元が計算してくれているおかげで、この世界は狂わない。 物理的法則が無視されないのだ。 しかし、逆を言えば、この[情報断層]の情報を狂わせれば‘物理的法則を無視できる’のだ。 それがコーカスの使う魔法の正体。 彼らは体内の[カロイドニウム]を通して[情報断層]にウィルス情報を発信し、瞬間的に[情報断層]を狂わせる。 火を操る者なら火の情報を。 水を操る者なら水の情報を。 風を操る者なら風の情報を。 それぞれ[情報断層]の数式に割り込ませて、自由自在に操るのだ。 そうすることにより彼らは、虚空に突然水を発生させたりできるのだ。 例えば火の能力者が[情報断層]のプログラムに‘私の体に火は無害’という情報ウィルスコードを割り込ませて狂わせれば、一時的に火を持っても無傷でいられるというわけである。 しかし火や水、風を操る者の情報改変はこの程度が限界である。 つまり、この‘情報の書き換え’に特化した存在が[情報操作]に目覚めたコーカスなのだ。
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