魔王の願い

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「勇者よ。なにゆえかような戦いを望む?」  今度はこちらから近付き、聞いてみた。 「姫を、姫を返せ!」  勇者はそう声を荒げた。 「ほう、姫とは?」 「アリス姫だ」  勇者はふらふらと立ち上がりながらも私の質問に答える。 「アリス姫だと!?」  さすがに私も焦った。なぜそれがわかったのか?  いつもの如く死んだと伝えられたのではないのか?  満身創痍ながらも勇者は斬撃を繰り出す。  くっ、不覚! アリスと聞いて焦ったのか反応が遅れてしまった。そのまま私の肩を剣が浅く切る。  しかしまだまだ傷というには程遠い。そして私が反撃しようと思ったそのとき――、 「二人とももうやめて!!」  と悲痛な叫びと共に、アリスが私と勇者の間に入って来た。 「魔王と戦うなんて、嫌です! 勇者よ、命令です。剣をしまいなさい!」  彼女の目は必死だった。なぜ、私のために? 「姫……?」  勇者は小さくそうつぶやいて地に伏せた。やはり限界がきていたのだろう。  さて、戦う理由がなくなった私は、玉座に戻り、剣をしまった。
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