11人が本棚に入れています
本棚に追加
「勇者よ。なにゆえかような戦いを望む?」
今度はこちらから近付き、聞いてみた。
「姫を、姫を返せ!」
勇者はそう声を荒げた。
「ほう、姫とは?」
「アリス姫だ」
勇者はふらふらと立ち上がりながらも私の質問に答える。
「アリス姫だと!?」
さすがに私も焦った。なぜそれがわかったのか?
いつもの如く死んだと伝えられたのではないのか?
満身創痍ながらも勇者は斬撃を繰り出す。
くっ、不覚! アリスと聞いて焦ったのか反応が遅れてしまった。そのまま私の肩を剣が浅く切る。
しかしまだまだ傷というには程遠い。そして私が反撃しようと思ったそのとき――、
「二人とももうやめて!!」
と悲痛な叫びと共に、アリスが私と勇者の間に入って来た。
「魔王と戦うなんて、嫌です! 勇者よ、命令です。剣をしまいなさい!」
彼女の目は必死だった。なぜ、私のために?
「姫……?」
勇者は小さくそうつぶやいて地に伏せた。やはり限界がきていたのだろう。
さて、戦う理由がなくなった私は、玉座に戻り、剣をしまった。
最初のコメントを投稿しよう!