魔王の願い

4/14
前へ
/16ページ
次へ
 ……もう五年も前の話である。  いつものように侵略を繰り返す我ら。しかし当然ながらニンゲンたちも負けじと攻め寄せることも多い。  その日は、魔王城が攻められた日であった。 「魔王様! ニンゲンどもが大部隊を率い、城に攻め寄せて来ております!」  部下の報告に私は「またか」とため息をつく。  もういい加減やめてくれ。諦めて降伏してくれ。  いつもと同じ日常。毎日どこかで行われている戦い。もううんざりだ。そう思いながらも、玉座に座ったまま部下に命令を下す。 「わかった。すぐ行く。皆に伝えよ。戦の準備を」  このときの私は、まだこの戦いが生むすべての「終わり」に気付かなかった。いや、気付くはずがなかった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加