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「……あなたが、魔王ですか?」
透き通った声で、女は私に聞いてきた。
「いかにも。私は魔王だ。まあそう警戒せずともよい。殺す気ならばとっくに殺しておる。そなたの名は?」
目に怯えを残し、こちらを睨みつける女が見ていられなくなり、私は極力穏やかに話しかけ、敵意がないことをアピールしてみる。
いつになってもなかなか話さない。私は特に苛立つことなく、ひたすら笑顔で待ち続けた。
「アリス。アリス=リクスラーです」
何分待ったのだろうか。警戒心が大分薄れたか、ようやく女は口を開いた。
「ふむ、アリスか。いい名だ。よし、この者を客室に連れて行け」
その言葉に、周りはざわめき始める。
「ま、魔王様、牢ではなくなにゆえ客室に……」
「これは命令だ。女を牢に入れるのは好かん」
さすがに私に逆らう者はおらず、部下の一人がアリスを連れていった。
それにしてもアリスの驚いたような顔はなかなかに気味がよかった。今思い出しても頬が緩む。
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