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その夜、私は自らアリスに食事を渡しに行った。
「開けてくれ。食事だ」
私がそういうとアリスはドアを開ける。そして私の顔を見ると目を丸くした。
「魔王!? なぜあなたが自ら食事を!?」
「……別に誰でもよいではないか」
アリスの発言に私は少し不機嫌に答える。
……捕虜などこれまでとったことなどない。扱いがわからんのだ。
そして私が去ろうとしたとき、アリスが声をかけて来た。
「あの、少しいいですか?」
「む、どうした?」
どうせ時間は空いている。少しくらい話もよいか。
「あなたはなぜ、私を捕虜に? それと戦のときも犠牲が少なかったような……。なぜです? これまでの魔王のことからでは信じられません」
答えづらい質問だ。信じてはもらえないだろうが、正直に言ってみよう。
「恥ずかしい話だが、もううんざりなのだ。この戦いも、なにもかもが」
彼女は目を見開いている。言うんじゃなかったか。
「私はただ平和のなかを平穏に過ごしたい。それだけだ」
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