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「あれ?小木原」 恭平にくっついてリビングに入った僕に気付いた薪森が、花の様な笑顔を浮かべた。 薪森に笑い掛けられて、薪森に名前を呼ばれると、何故か最近この胸はいつも鼓動を打つ。 「遼も桜のピアノ聴いてくれるってさ!」 「え、本当?」 広いリビング内を突き進んでグランドピアノに近付いて行く恭平の言葉で、薪森が嬉しそうな表情を僕に見せる。 僕は一言もそんな事は言ってないが、薪森が嬉しそうな反応を示すので否定せずに恭平に着いて行った。 そして薪森はピアノの鍵盤に両手を置き、モーツァルトのトルコ行進曲という軽快な曲を弾き始めた。 クラシックに疎いので聴いた事がある程度だが、作曲家と曲名は後に知った。 薪森が奏で音に魅了され、曲名を知りたくなって調べたから。 僕が惹かれるのはピアノの音色になのか、ピアノを弾く薪森自身になのかは自分でも解らない。 けど、とにかく薪森から目が離せない。 広くて綺麗で甘い匂いがするリビングで、僕は恭平の隣で薪森の奏でる旋律にずっと聴き入っていた。
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