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薪森の優雅な表情、鍵盤の上を滑る薪森の白い両手を交互に見つめる、僕達三人の男子。
恭平の弟の柊平は薪森に寄り添う様に立っていて、恋する瞳で薪森の顔を見ていた。
そして、恭平も。
学校では恭平と薪森が両想いだと思ってる人は少なくないが、恭平と薪森の当人は否定している。
だが恭平は薪森をただの幼馴染みだとは思ってないんじゃないか、と感じる事が度々あった。
薪森は恭平をどう思ってるんだろう。
僕は幸せそうに薪森を見つめてる恭平の横顔を眺めた後、ピアノを弾く薪森の横顔に視線を戻した。
薪森は人を惹き付ける力を持ってる。
容姿や振る舞いだけじゃなく、特別な何かに惹かれる感覚。
女子には興味が無かった筈の僕の眼を離さない程。
幼稚園時代から周りの男子にチヤホヤされていた薪森にも、僕は特別興味は湧かなかった。
『確かに可愛い』とは思っていたが、ただそれだけ。
これから先も、薪森に対して僕はずっと他人事の様な感想しか持つ事が無いと思っていた。
誰かに恋をする自分は全く想像出来なくて、自分には剣道さえあれば充分だと思っていた。
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