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零
あれは小学校四年生に進級した、新学期の初日。
「小木原、一緒に帰ろ!」
帰りのホームルーム後、帰ろうとしている所にクラスの男子の一人が満面の笑顔で寄って来た。
「え」
余りに唐突に誘われた僕は間抜けな顔をしてしまう。
何故ならその男子、蔵馬 恭平は今日初めて同じクラスになったばかり。
しかも彼と会話を交わしたのは今の誘いが初めてで、話した事も無い相手と一緒に帰ろうとする意図が解らない。
「ていうか“小木原”より“遼”の方が呼びやすいから“遼”って呼んでいい?」
「は?」
取り敢えずは一緒に教室から出ると、蔵馬は人懐こい笑顔を崩さず突拍子もない事を言い出した。
初めて話しただけでなく、いきなり下の名前で呼ぼうとするとは。
「俺の事も“恭平”って呼んでいいよ!」
「え……あ、ああ……」
「あははは!顔引き攣ってる!」
苦笑いを浮かべる僕を見た蔵馬 恭平は豪快に笑う。
話したのは今が初めてだが、恭平の事は昔から知っていた。
幼稚園も同じだったし、小学校でも恭平はちょっとした有名人だ。
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