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「あ!居た居た!桜居た!」 結局、柊平に引っ張られて体育館前まで来てしまった。 明かりが灯る体育館内を覗く柊平は流石薪森の姿を見付けるのが早く、薪森を発見した途端に笑顔を浮かべる。 薪森は新入部員数人にドリブルシュートの指導をしていて、後輩達に対する薪森の優しい眼差しから人柄が滲み出ている。 僕は僕で彼女に見惚れてしまった数秒後、我に返って左隣の柊平に勘付かれていないか確認した。 柊平に気付かれたら大変だ。 けど柊平は僕が薪森に見惚れていた事に気付くどころか、薪森を真っ直ぐに見つめたままだった。 柊平のその横顔は、僕が今までに見た事のない表情をしている。 薪森に恋する一人の男の表情。 「……桜はやっぱすげーなぁ」 熱い視線を薪森に捧ぐ柊平が独り言の様にポツリと呟いた。 そんな柊平を目の当たりにすると胸が締め付けられる。 僕が幼稚園時代から知っていた柊平が、今初めて見せた純粋で一途な普通の男だという一面。 柊平の想いが伝わって来る。 こいつも本気で薪森が好きなんだ。
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