二十九

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「ほんとごめん……すいませんでした」 彩芽が今どんな顔をして俺を見ているのかは分からないが、ただ誠心誠意を込めてありのままを伝える。 「……クリスマス一緒に過ごせて、腕時計くれて、手ぇ繋いで歩いて、めちゃくちゃ嬉しかった。……こないだの土曜も、浅羽からの電話に邪魔されるまでは幸せだった」 今も左手首に着けている腕時計を気に入っていて、彩芽と過ごす時間が俺の幸せだという事。 そして浅羽について。 「……俺、浅羽に嫉妬してんだよ。彩芽の初恋の相手で、彩芽にとって大っきい存在で……。いきなり出て来て、簡単に彩芽の心掴んで……羨ましかった」 浅羽に劣等感を抱いている事、嫉妬深くて醜い自分の事。 「浅羽とやり直して欲しくない。つーか、彩芽が誰かの彼女になるのが嫌だ。……そうなったら、今度こそもうほんと耐えられない」  薪森を好きだった小四の夏から高三の秋の八年間で痛感した事。 もうあんな想いはしたくないという自分の臆病さ。 不戦敗より判定負けがいい。 「俺、彩芽に惚れてるから……好きだから」 ボロ負けだろうと挑みたい。 「彩芽が好きだ」
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