二十九

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「……振られる前提で告ったし、それでも渡したかった。……捨ててもいいし、売ってもいいし……。一応でいいから貰っといて」 無理に微笑を作る努力はするが、自分で言っていて哀しくなる。 振られるのもプレゼントを捨てられるのも本当は心底嫌だ。 けど判定を下すのは彩芽。 勇気を出して視線を上げ、目の前に居る彩芽の顔を真っ直ぐ見つめた。 「……こういうの迷惑だろうし、今日だけにするから……最後にするから、もう一回だけ言わせて欲しい」 俺を見つめ返す彩芽の瞳はポーチライトの光を纏い、潤んだ瞳が一層キラキラしている。 その瞳が俺の決意と覚悟を揺さぶるが、もう戻れない。 だからこそ最上級の言葉で云って終わらせる。 「僕は彩芽が世界で一番好きです」 彩芽に気持ちを伝えるのはこれが最初で最後。 次に逢う時は、兄貴の友達であり友達の兄貴という元の関係に戻る。 振られる俺にはそれしか道が残されていない。
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