二十九

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ぼんやりと俺を見つめたまま両手でプレゼントを握っている彩芽の、ポーチライトの光が反射する煌めいた瞳が揺れている気がした。 それがどういう感情なのか俺には読めなくて、知るのも怖い。 困ってるとしたら、そんな彩芽を見ていたくない。 「……じゃあ、今日はこのまま帰るから……」   俺は無理にでも作り笑いをして見せ、彩芽を見つめ返したまま足を一歩退いて後ろへ下がった。 「あー……出来れば、衣野のこと気遣かってやって。……あいつシスコンだし、彩芽に優しくされたらちょっとは癒されるかも……」 少しずつ後退りしながら頼んで彩芽の元から離れ、衣野宅の敷地を出る寸前で一旦足を止める。 「……じゃあ、また……」 作為的な微笑で彩芽に向かって今日の別れの挨拶をして、呆然と俺を見つめたままでいる彩芽に背を向けて道路へ出た。 衣野宅前を足早に離れて並木町へ戻る住宅地の暗い夜道を突き進む俺は、もう彩芽の顔を見られる状態じゃなかった。 自分なりに精一杯やったつもりだが、最後の方は上手く笑えていなかったかもしれない。 一方的に色々と伝えておきながら彩芽の返事を聞かずに立ち去ってしまったし、今思えば浅羽が東大に合格したのかどうかも聞いていない。   ……俺にはもう関係無いか。
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