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「遼、桜ん家行こ!」 笑顔で僕にそう言った恭平は自分の家をスルーし、隣の薪森の家に向かって行く。 「え……あ、うん……」 いきなりの薪森家訪問に僕は少し躊躇しつつ、恭平に従って後を追った。 恭平は堂々と薪森邸の立派な門を通り抜け、堂々と庭の真ん中の砂利敷を突き進み、立派な自宅の玄関ドアを勝手に開ける。 「桜ー!遼連れて来たー!」 玄関でスニーカー脱ぎながら大声で叫ぶ恭平の後に続き、僕も恐縮しながらスニーカーを脱いだ。 やっぱり玄関まで広くて立派な造りで、自宅内の奥へ続く広く長い廊下や洒落た階段も高い吹き抜けも、全てが洒落ていて綺麗で良い匂いがする。 そして何処からかピアノの音色が流れているという、何もかもが別世界の邸宅だ。 「何だ、柊平(しゅうへい)。まぁた桜にくっついてんのかー」 ピアノの音色の出所らしきリビングのドアを開けた恭平が、リビングの奥の方を見ながら言った。 広いリビングの大きな窓辺には、グランドピアノの鍵盤に両手を添えて椅子に座っている薪森の姿。 その薪森の傍には、恭平に似た子供が立っている。 恭平の弟、柊平だ 。
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