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【第一章】過去編
僕が生まれた日は、少し肌寒さが残る春。
この地域は桜前線が西日本よりも遅く、まだ桜の花の蕾が未開の時期。
同級生の友人の中で一番早く誕生日を迎える事に多少の優越感はある。
けど生まれた日が四月三日じゃなく、四月一日以前だったら違う自分になっていたかもしれない。
もしも学年が一つ上にずれ込んでいたら今とは違う人生になっていたと思う。
少なくとも現状よりは自分を嫌いにならずに生きていた筈だ。
三人兄弟の第一子として親から期待されて信頼される事も、それに応える事も苦じゃない。
妹と弟に頼られる事を重荷だと思ってないし、同級生達から兄貴扱いされる事も嫌じゃない。
けど、僕にだって誰かに頼りたくなる時がある。
甘えたくなる事も、慰められたくなる事もある。
特に、彼女には。
四月一日以前に生まれていれば良かったと思う反面、四月三日に生まれて良かったと思う気持ちも捨て切れない。
僕は彼女の傍で堕ちて行く。
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