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その日の練習は十九時に終わり、部員達は練習場内で袴から制服に着替え始める。 「遼先輩。桜も部活あるんすよね?今日」 「え……あー、らしいけど」 僕の隣で着替える柊平から唐突に薪森の事を聞かれてドキッとしたが、平静を装って返した。 何で僕に薪森の事を聞くんだろう。 「ちょっと体育館覗いて帰んないすか?桜の様子見てみたいし」 「え……いや、独りで行けば」 「一年坊主が一人で体育館前うろついてたら危険じゃん」 上級生からのヤキを怖がる様なタマじゃない癖に、柊平は何故か僕と一緒に行きたがっている。 「遼先輩だって本当は見たいんじゃないんすか?」 隣から聞こえたのは、ワントーン低くなった柊平からの言葉。 僕は耳を疑って柊平にゆっくり視線を向けて見た。 「ほら、早く行こ!」 しかし柊平は直ぐに口調と声のトーンを戻し、強引に僕の背中を押して歩かせようとする。 一体何だったんだろう。 いや、柊平の事だから特に深い意味は無いだろう。 多分、いつも僕を弄ってるノリの軽いジョークみたいなものだ。
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