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「ありさ、どうしたの?」
隣の友人が小声で聞いてくる。
『ウサギが…いや、なんでもない!』
「…そう」
彼女はしばらくいぶかしげな目で私を見ていたが、短く返事をして視線を黒板に戻した。
(なんだろ、今の…幻覚?)
いたのだ、ウサギが。
いや、正確には、見えたのだ。
いや、さらに正確には、見えた気がしたのだ。
真っ白なウサギが、私の机の上にひょこっと顔を出して、赤い目で私を見た。
気がした。
一度まばたきをしたら、もうその姿は無かった。
(寝ぼけてた…んだよね)
キーンコーンカーンコーン…。
本日の授業終了のチャイムが鳴り、府に落ちない自分を気のせいだ、と納得させながら帰宅の準備をした。
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